1.厄日

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玄関のドアを開けた途端、外は土砂降りの雨だった。12月も半ばだというのに、なにこの降り方。 「はぁぁ…もう、なんでなのぉ…」 ついの弱音が口をついたのは無理もなかった。 朝、目が覚めた時は既に出勤時刻だったのだ。つまり大寝坊。いつも前の晩にチェックするはずの天気予報をうっかり忘れていた上、目覚ましの設定をも忘れてしまっていた。 『昨夜浮かれすぎてしくじった』と、私は猛反省。起き抜け、トイレに駆け込んで下着を下ろした瞬間、時間が無いにも関わらず、便座に座ったまま頭を抱えて暫し唸っていた。 月のものが始まっていた。『よりによってこのタイミングなんて…ついてない』 カーテンを開けて空を眺める余裕などなく、閉め切りの薄暗さの中、私はバタバタと身繕いだけを済ます。部屋の外の烈しい雨音は、薄い壁をものともせず、耳に入ってきてはいたが、思考の範疇には届かなかったようだった。 築20年、木造アパートの1階、角部屋。玄関から一歩でコンクリート打ちの外廊下に出て、2歩目は雨が当たる外だ。 一歩玄関から片足を出ししな、 「ほんとついてない!」 文句を言いながら体を反らし、下駄箱に引っ掛けてある傘を引っ掴んでドアの外に飛び出した。 だが、その時、脳から司令が下された。 私は、くるりと体を反転させ玄関内に戻ると、下駄箱の中から別のパンプスを掴み、タタキに投げ出し素早く履き替えた。 こんな時のために捨てずに取っておいた履き古しのパンプス。今のパンプスは下ろしてからまだ3日目だった。 私はこの状況であっても、この判断は正しいと思っていた。
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