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7階から戻ると定時をかなり過ぎていた。オフィスに急ぐ。
すると、室長の周りに人の輪ができており、なにやら打ち合わせ中だった。
「戻りました」
私は輪に声を掛けると、丁度発言していたあや美が言葉を切り、私に振りかぶった。
「あ、やっと帰ってきた。芽衣子さんたらどこ行ってたんですかぁ?」
「ごめん、すぐ戻るつもりだったんだけど。皆でなにしてるの?」
すると、輪の中心の室長が答える。
「やぁ、実はね、四方堂君の送別会やろうって話よ」
ああ、なるほど。そう言えばあや美はずっとやりたがっていたな。
「四方堂君、忙しそうだけど、時間取れそうですか?」
私は大きく頷いて賛同の意を示し、輪の中に加わった。
室長と次長の他に数名のメンバーで、とにかく計画してしまおうということになったと言う。こちらのスケジュールを考えていたら、決まるものも決まらない、と。
四方堂君のスケジュールだけを確認してきたと、あや美。いつの間に?『あ、もしかして、さっきか』
「たまたま本部長室から出てきた四方堂さんを捕まえたんですよ」
なるほどね。
「異動から2ヶ月にもなるから、これを逃したら立ち消えになりそうね」
私も前向きに意見した。
「そうなんだよ。彼は長くここで頑張ってきたんだし、古巣を懐かしんでたまに寄ってもくれるし」
「そうそう。これからの、営業部との交流の橋渡しになったらなんて、ね?」
次長たち、こんなふうに思っていたんだ。営業部との確執について、少なからぬ懸念もあったのだろうか。
「そういうの、社内的に良くないですもんね…」
私はボソリと呟くに留まった。
皆、思いは同じなんだ。できることなら、上役たちには、誰かの足下を掬うような真似はして欲しくない。
それに、社内で争っている場合ではないのだ。他社との競争に負け、事業を縮小したり、大手に身売りする同業他社の話はよく耳にする。
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