9.収束

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『本部長からなにか言ってくるかな』 四方堂君から事情を聞いて、本部長はどんなことを考えたのか。 だけど、1日経っても2日経っても、音沙汰無しだ。 私が何かを訴える機会は、もう無い。もう、出る幕は無いということなのだ。 滝沢さんの罪を暴いて、早川先輩に会いに行き、南雲さん、真山さんから事情を聞き出した。 あの行動力には、我ながらアッパレと言ってやりたいぐらいだった。少し、酔っていたのかな…。 そんなことを考えて、少し寂しく感じていた。 そして金曜日。四方堂君の送別会改め、壮行会という名目に変わって、宴は始まった。 地方に転勤という訳ではないのだから、お別れではないのだと、あや美が力説していた。 場所は会社と駅の間の、雑居ビル2階にある割烹風の店。貸し切りだった。 集合は6時。主賓の四方堂君には、少し遅れてきてくださいと、あや美が電話で伝えていた。なんか微笑ましいなと思った。 特にイベントは入れず、ただただ飲んで喋って楽しもうという飲み会になった。 本部長は、前社長である現会長との会食が入っているとかで、来られないとのこと。 「四方堂君さん、赤ちゃんの予定日はいつ?」 「結婚式はどうするの?」 「奥さんとの出会いは?」 「美人?可愛い?写真ないの?」 などなど。ここぞとばかり、遠慮知らずに四方堂君を質問責めにしていた。 皆、我が事のように嬉しそう。 自分でも不思議だった。四方堂君と奥さんのことを聞かされても、胸が痛むこともない。なんか、すっかり吹っ切れたみたいだ。 『いろいろあったからかな…』 そんな私の心情を知ってか知らずか、四方堂君はすごく優しい目で私を見つめる。『こんな話題聞かせてごめん』と言ってるみたいに。 『いいよ。おめでたい事なんだから』私はそう気持ちを込めて深く頷いてにっこり笑って見せた。伝わったかどうかは分からないけど。
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