48人が本棚に入れています
本棚に追加
2時間後。酔いも回ってきて、室長が四方堂君を独り占めにしていた。
私は、あや美とみちるを相手に女子会もどきを楽しんでいたら、男性数人に囲まれ、合コン状態となったのをそこそこ楽しんでいた。
すると、田中君という若手がへべれけで乱入してきた。
右手には飲みかけのビールグラスと、何故か左手にグリーンアスパラガス。先っちょにマヨネーズがついていたから、食べるつもりなのだろうけど。『?』
「松浦さんはぁ、彼氏と長いってぇ噂がぁ、俺としてはぁ、なんか違うんじゃぁないかってぇ…いや!違うんじゃなくってぇ、えぇと、だからぁ彼氏ってゆぅのはぁ、実はいないのが長いってはなしっすよねぇ」
「ちょっと!田中!なに失礼なこと言ってんの。芽衣子さんの彼話は禁句でしょ!」
「え?」そうなの?
酔うと失礼になる後輩の田中君は、まだ20代半ば。仕事で組むことは無いが、飲み会と言うと、一緒に幹事になったり隣の席になるとよく絡まれていたのだが。
私は驚いた。私の彼話はいつから禁句になっていたのだろう。
「芽衣子さぁん、すみませぇん。禁句っていうのは大袈裟で。なんていうか、気を使いましょうというキャンペーンなんですよぅ」
あや美もかなり飲んでいるようで、なにを言ってるんだか。キャンペーンって。
「気を使わせてごめんよ」
と一応謝っておいた。笑顔を見せて、気にしていないことをアピールする。
田中君は、ほぼ独り言を延々とやっていて、皆はいつものことといったこの状況に慣れきっていて、彼は放置されていた。
最初のコメントを投稿しよう!