9.収束

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土日は敢えて普段通りに過ごした。 スーパーで買い物をしていたら、前にアイツから実家の手土産を貰ったことを思い出した。 『なにかお返しになる物を…』と、物色してみたものの、なんか、わざわざ買ってまでというのはわざとらしいかと考え直した。 どこかに旅行にでも行ったら買ってこよう。当分その予定はないけどね。 不覚にも、貴重な休みにアイツのことを思い出したのが妙に悔しくて、飲む気満々でワインを買って帰った。 アラサー独身女が自宅でひとり飲み。職場の人に気を使われるようになってしまった、私は立派なお局なのね。 侘しくても悲しくても、これは現実なのだ。避けようとか逃げようとも思わない。 『受け止めてやろうじゃない、現実を』 月曜日。いよいよ役員会の日。 朝、いつもの時間に出てきて、少しばかりトラブル。電車が止まっていた。 『人身事故によりぃ…』とのアナウンスを聞いて、人で溢れる改札で立ち止まった。 『えぇぇ、上りなの?』 こういうことは日常茶飯事ながら、今日という日というのが幸先の悪さを思わせる。 アナウンスに耳を傾けながら、改札で固まる。ホームの混雑を考えると、そこから動くことが出来なかった。 『タクシーも行列だろうな』 ラインであや美に、少し遅れるかもと伝えた。発生直後だけに、見通しは立たなかった。 すると、暫くしてあや美からの返信。『みちるも遅れるそうです。今朝はお姉さんの家がある三鷹から出勤だったそうです』 ふぅん。みちるはお姉さんがいるの。良いなぁ。 それから30分ぐらいで電車は動き出した。混雑を避けて、2本見逃してから乗車した。
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