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7階にある会議室と6階のミーティングルームは業者担当の保全スペース。つまり、掃除のおばさんが清掃を担当している。
でも、あんなに高く椅子を積み上げたのだ。おばさんに扉の隙間など見つられるだろうか。
その上、そのドアを元に戻すためには椅子を下ろすという大きな手間を掛けなければならない。
若しくは小部屋側から閉めるとしたら、誰か部課長の許可を貰わなければ、おばさんが備品室に入ることはできなかった。
『おばさんではない』
それなら誰?との問いには、もうそれしか考えられなかった。私の直感では、四方堂君だった。
四方堂君が、扉を閉めたのだ。
会議室でのやり取りが分からぬまま、時間だけが刻刻と過ぎて行く。
暗い部屋に佇み、私は四方堂君への怒りがふつふつと沸いて来るのを感じていた。
一縷の希望を掛け、ドアノブに手を掛けたが、回ることはなかった。鍵のないドアなのに、どうやって開かなくしたのか?
『四方堂のやつ…!』
こんな邪魔立てをするなんて、四方堂君は最早完全に営業部員となって、矢崎部長の腰巾着にでも成り果ててしまったのか。
意気消沈と四方堂君への怒りで、心のバランスを崩しそうだった。息が荒くなる。
仕方なく、私はその場所を引き揚げることにした。
「四方堂のやつ、どうしてくれよう」
独り言を呟き備品室から静かな廊下に出た時に、廊下に佇む人影に超絶驚いて、悲鳴をあげるところだった。
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