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「!…あっ四方堂君!」
今は憎き四方堂君その人が、何故か廊下にいた。
「…悪い」
済まなそうな顔をしていても、私の怒りは収まるものではない。
「っ…なんでっ!なんで邪魔したのよ!」
会議室に近いことへの配慮はした。音量は囁き声程度だが、語気の強さには私の怒りの強さが表れていた。
私は四方堂君に取り付き、右手を大きく振りかぶって殴ろうとした。
が、その私の右手首を掴んで、私を止めたのは…南雲さんだった。
「え…南雲さん?」
「ちょっと、痴話喧嘩は他所でやってよ」
キザったらしい。なによ、南雲さんも仲間?四方堂君たら…。
余程、私は怒り狂った顔をしていたのだろう。
南雲さんも四方堂君も、恐れをなして、とにかく場所を変えようと私を引っ張って行こうとした。
「言い訳なんか結構よ!もう、四方堂君なんか知らない!」
私は掴まれた南雲さんの手を振り払い、その場から駆け出して行った。勿論、面倒な総務方面ではなく、会議室の奥の階段で。
そのまま1階まで下りて行き、息を荒らげたまま、外出先にしていた栄光社へ向かって歩き出した。
でも、栄光社に徒歩では30分以上掛かるし、そもそも、今現在、栄光社に行く用件は皆無だった。
私は通りすがりのカフェに入って、いつもは鼻にも引っ掛けない馬鹿みたいに長いカタカナの名前の飲み物を注文した。
一口飲むと甘さが襲う。
「甘っ!」
小さく叫んでしまったが、客足は疎らだし、店員は洗い物をしており聞こえなかったようだった。
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