9.収束

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私は、衝立の向こう、ギタイの吉森さんを目で探した。が、いなかった。 『いろいろ後始末があるのかな』 ふと、自分を見つめる視線に気がついて、そちらに目を向ける。あや美が、眩しそうに私を見つめていた。目が合うと、目を瞬かせた。 私は今こそ、あや美に伝えるべきと、口を開いた。小さな声で。 「早川先輩の懲戒が解けたそうよ」 あや美は、ハッとして、それから満面の笑みで大きく頷いてくれた。 きっとあや美は、片時もこのことを忘れず、私の怪しい行動をずっと理解してくれていたんだと思う。 四方堂君もそう。皆で私を見守ってくれていたに違いない。ありがたかった。 その日の定時後、ひとり残業をしていたら、電話が鳴った。出ると、真山さんだった。 「あ、どうも…」 あんまり意外で、言葉がスムーズに出てこなかった。 「君から証言してくれって、いつ言われるかと待ってたよ。まぁ、でも。あの人が責任を取らされたということは、全て終わったということなんだね」 真山さんはやはり、早川先輩が思っていたような誠実な人なんだと思った。 早川先輩との歯車が狂ってしまっただけ。 「真山さんにはそうお願いに上がるつもりでした。でも、最強の助っ人が、全部引っ括めて解決してくれたんです」 私は大雑把な説明に留めた。真山さんにはそれで納得だったらしく、『お世話になったね』と言って電話を切った。 さっき、昼休み全部を使って、本部長から、自分が動議を発動した後に起きたことを掻い摘んで説明を受けた。 初め、矢崎部長はとぼけて躱していたが、突然、本部長への攻撃を始めた。 だが、吉森さんの作った資料に目を通していた社長は、これ以上の背任行為に目を潰れば、自身も加担の疑いをかけられる、との恐怖に抗えなかったのだと。 矢崎部長は後ろ盾を失った。 矢崎営業部長の処分は、刑事告訴は免れたものの、役職の解任はその場で決議されたのだという。
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