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散々勿体ぶっておきながら、南雲さんは話を逸らした。
「あ、そうそう…今朝、あの時はさ、君が会議室の方に歩いて行くのが見えて、その後、四方堂が追って行くように席を立ったもんで、気になって、僕も様子を伺っていたんだ」
なるほど。だからあんなタイミングで私の暴力を止めることができたんだ。
「それに、コレを仕掛けていたわけだし」
南雲さんは私の悪巧みに気がついていたのだろうか。
「あの時…」
「四方堂が会議室で何やらガタゴトやっていたのは土曜日。わざわざ休みの日に、君の仕掛けを解いていた」
驚いた。土曜日にわざわざ?
「南雲さんは土曜日に、仕事?」
まぁね。と本当とも嘘とも思える軽い口調で答えた。
「…その時、四方堂から聞いたんだ。君が会議を盗み聞きしようとしているとね。それを食い止めるのは、自分のわがままかもしれないけどって言ってた。君には汚れた世界を見せたくなかったんだろうなぁ」
凡そそんなことかと予想はしていた。だから、四方堂君のその辺りの言い分に驚きはなかった。
それより、南雲さんと四方堂君って、そんなに交流深まっていたんだと、そっちの方が意外だった。そういえば以前、イタ飯ランチを一緒に摂っていた。
「四方堂君とは、課が違いますよね?」
そんな疑問もぶつけてみた。
南雲さんは、頷いた。
「まぁね。だけど、君繋がりで、お互い意識し合ってた感じかな?」
へ?意識?なんの?どんな?
恐らく心の声は顔に出ていたのだろう。南雲さんは明解に答える。
「四方堂は、松浦さんのことを好きなんだよ」
「え、いや、それはないですよ」
私はオタオタしながら否定する。まっさかぁ。
「君と距離ができたことで、初めて君を女として意識し出したんだろうな。デキ婚、あいつ、後悔してる」
そんな、断定する根拠は?
「南雲さん、そんなの有り得ませんよ。なに言っちゃってくれちゃってるんですかっ」
南雲さんはあくまで、どこまでも軽く言葉を吐く。
「分かるんだよ。男の勘ってやつ。分かっちゃうんだな、これが」
だからなんでなんですか?もぉぉ。私はできるだけ大袈裟にため息をついた。すると。
「僕も、松浦さんのこと、女として意識してるからだな」
え。今なんて?
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