9.収束

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散々勿体ぶっておきながら、南雲さんは話を逸らした。 「あ、そうそう…今朝、あの時はさ、君が会議室の方に歩いて行くのが見えて、その後、四方堂が追って行くように席を立ったもんで、気になって、僕も様子を伺っていたんだ」 なるほど。だからあんなタイミングで私の暴力を止めることができたんだ。 「それに、コレを仕掛けていたわけだし」 南雲さんは私の悪巧みに気がついていたのだろうか。 「あの時…」 「四方堂が会議室で何やらガタゴトやっていたのは土曜日。わざわざ休みの日に、君の仕掛けを解いていた」 驚いた。土曜日にわざわざ? 「南雲さんは土曜日に、仕事?」 まぁね。と本当とも嘘とも思える軽い口調で答えた。 「…その時、四方堂から聞いたんだ。君が会議を盗み聞きしようとしているとね。それを食い止めるのは、自分のわがままかもしれないけどって言ってた。君には汚れた世界を見せたくなかったんだろうなぁ」 凡そそんなことかと予想はしていた。だから、四方堂君のその辺りの言い分に驚きはなかった。 それより、南雲さんと四方堂君って、そんなに交流深まっていたんだと、そっちの方が意外だった。そういえば以前、イタ飯ランチを一緒に摂っていた。 「四方堂君とは、課が違いますよね?」 そんな疑問もぶつけてみた。 南雲さんは、頷いた。 「まぁね。だけど、君繋がりで、お互い意識し合ってた感じかな?」 へ?意識?なんの?どんな? 恐らく心の声は顔に出ていたのだろう。南雲さんは明解に答える。 「四方堂は、松浦さんのことを好きなんだよ」 「え、いや、それはないですよ」 私はオタオタしながら否定する。まっさかぁ。 「君と距離ができたことで、初めて君を女として意識し出したんだろうな。デキ婚、あいつ、後悔してる」 そんな、断定する根拠は? 「南雲さん、そんなの有り得ませんよ。なに言っちゃってくれちゃってるんですかっ」 南雲さんはあくまで、どこまでも軽く言葉を吐く。 「分かるんだよ。男の勘ってやつ。分かっちゃうんだな、これが」 だからなんでなんですか?もぉぉ。私はできるだけ大袈裟にため息をついた。すると。 「僕も、松浦さんのこと、女として意識してるからだな」 え。今なんて?
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