9.収束

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土曜日、早川先輩に会いに、私は2ヶ月前と同様、新宿から旅立った。 なんとなく、手土産らしい話もあるし、今回は先輩と会うのが違う意味でワクワクしていた。 『退職金、出るのかな?なんて聞いたらいかんかな?』などと、相変わらず極楽とんぼな思考発想でいた。 車中、ひとり思い返す。 この週のとんでもない始まりから1週間は、とんでもない1週間だった。 社内は、毎日朝から晩まで上司は会議漬け。上司の振り分けた業務は、消化不可能ではないかと誰もが感じていたほどの過酷なものだった。 「体が2つ欲しいぃぃ!」 あや美が謎な呻き声をあげた。 「それか手をあともう2本…」 私は力なく応えた。すると、「1本でも!」と田中君の唸り声も聞こえた。 噂に聞いたところによると、会社が契約しているコンサル会社の偉そうな面々が、役員室に居っぱなしなんだそう。弁護士とかもいるかもしれない。 『後処理、大変そうだな…』 私は、担当ではない関係先への出張が毎日だった。室長や次長の名代だ。神経がすり減り、体力も限界に近かった。 その他、試作品のチェック等、営業部とのすり合わせにも加わった。とにかく時間が足りなかった。 そんなイレギュラーな業務の終盤、金曜日の夕方、あや美が本部長からの電話を受けた。そして喜色満面。 「今すぐ企画室全員、本部長室に集合ですぅ」 と呼びかけた。 あや美は更に、出先の者に、手が空き次第戻るようメールを素早く打っていた。 なんだろうと怪訝な顔でゾロゾロと本部長室に入っていくと、応接セットのテーブルだけでなく、片付けられた本部長のマホガニーの机に、オードブルの大皿とサンドウィッチ、ノンアルコールの飲み物がところ狭しと並べられていた。本部長からの粋な計らいだ。 「いやぁん、なにこれぇ」 あや美は興奮して目の色を変えていた。
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