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早川先輩は、到着したバスターミナルのその場所で待っていた。
着いたら連絡しますと伝えていた。『待ってるね』とは聞いていたけど、まさか到着時にここにいるとは。早朝なのに。
「早川先輩、ここで待っていてくれたんですか?なにもこのタイミングでなくても」
私は挨拶もそこそこにそう口に出したが、先輩は相変わらず優しく微笑んでいた。
「そこに車を停めてるの。うちに来ない?」
「え?」
車中、親御さんのいらっしゃるおうちに朝から押し掛けるなんて、なんだか申し訳ないと恐縮し通しでいた。
「実は、今回のこと、というか2年前からのことを初めて両親に話したの。そしたら、芽衣子さんが来るなら是非会いたいって」
誰にも話さずに…先輩は強いなと思いつつも、抱えた辛さは如何ばかりだったろう。改めて先輩の苦労を思い、喉の奥に悲しみが詰まった。
先輩の家は、高松市内の新興の住宅地にあった。見たところ、築年数はうちの実家とどっこいどっこいの感じ。でも、庭が広いのとお隣との堺がゆったりめで羨ましい環境だ。
ご両親は、私を熱烈歓迎してくれた。
先輩とよく似ているお父さんは、白髪混じりの細面で、思慮深そうな眼差しが印象的な人だ。
お母さんは、赤チェックの割烹着を付けていて、ニコニコとよく笑う、いかにも人柄の良さが滲み出ていた。
お二人共、押し付けがましいところもなく、それでも最大に歓待してくれているのが分かった。
「朝ごはんまだでしょ?一緒に食べよう」
先輩は、気軽な感じで私を家族のダイニングに誘ってくれて、空腹の私は、恐縮しながらも喜んで頂くことにした。
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