11.予兆

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店に入ると、あや美が手招きしていた。席をちゃんと取っていてくれていた。 「よく席取れたわね、ここ」 グッジョブ!と聞こえたのだろう、あや美は褒められて嬉しくなってニヤニヤが止まらない感じだ。 この店のシステムは、おかわり自由のご飯とお味噌汁がサービスで、だいたい100円から300円の価格設定の小鉢や皿が並べられていた。自分で好きなおかずを選んで500円から800円ぐらいでおいしい食事にありつけるのだ。 おかずは和食中心ながら、魚料理にムニエルがあったりグラタンやカレーがあったりと、家庭料理に近かった。 数分前に着いたであろう、あや美とみちるは既にお盆においしそうなメニューがセットされていた。 私は焼き魚と揚げだし豆腐、タコの酢の物を取り、650円也。 モリモリ食べて、既に2人には追いついていた。 「ところで、さっきの電話は誰だったんですか?」 グリーンアスパラのサラダをコリコリ齧りながら、あや美が聞いてきた。 「あぁ、あれ?南雲さんだった」 すると、あや美どころかみちるも驚いて私を凝視する。 「南雲さんが、なんで芽衣子さんの番号知ってるんですかっ?それに、もう辞めたのに」 まるで南雲さんが不正でもしたかのような憤懣をぶつけてきた。 私はできるだけなんでもない素振りで、片方の手のひらをヒラヒラとやって見せる。 「南雲さんには早川先輩の件でお世話になったのに、急な感じで辞められちゃったでしょ?お礼も中途半端だし。そもそも、事後にちゃんと話せてなかったから、連絡もらってこっちも良かったなぁぐらいなのよ」 「えっ!?会うんですか?大丈夫なんですか?」 みちるは、なるほどと納得したようだけど、あや美はなんだか不審感丸出しのジト目で私を見つめている。 いやぁ、困りましたなぁ。あや美は一体なにを心配しているのだろうか。 2人には、『極力なんでもないでしょう?ちょっと飲んで、話して、終わりよ』と、最後に言って、この話は終わらせた。
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