11.予兆

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あんまり驚いて、持っていたバッグが肩からズルりと落ちた。反射で手で受けたが、バッグの重さが急に気になり出して『なんで今日はこんなに重いのだ?』などと、余計なことを考え始めている。思考が逃避していた。 私の顔には、その逃避の中身がダダ漏れだったのだろうか。 「答えは今でなくても構わないから」 いつに無く、真摯な面持ちの南雲さんに面食らうが、ナントカ気持ちを冷静に保って思いを巡らせた。 『私にその意志はない…有り得ない』 私は、バッグを肩に戻して、南雲さんを促し再び歩き出した。横目でチラチラ南雲さんを見ながら問いただす。 「南雲さん…早川先輩への気持ちは、もうすっかりないのですか?」 南雲さんは、『早川さんか』と独りごちてから、のんびりと私に笑いかける。 「彼女は僕にとってはもう過去なんだよ。君だってよく分かっているよね。それとも、先輩に気まずいのかい?」 過去?そうなの?完全に気持ちがゼロなら、あんなふうに先輩のことを心配してくれたのは…なぜ? 「南雲さんは、私のことは気の迷いっておっしゃいました」 「ああ…」 私は次第に興奮してきて、少し早口になっていた。脳裏には早川先輩の寂しそうな笑顔が浮かんでいる。 「もし!もしもの話ですけど、早川先輩が南雲さんとまた付き合いたいって言い出したら?焼けぼっくいには火はつかないって保証はありますか?それとっ、私が、もしも子供のできない体なら?それでも結婚したいですか?というか、そもそも!南雲さんは私のこと好きなんですか?結婚したいほど好きとか愛してるとか、南雲さんからは全く感じませんけどっ」
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