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のんびりと歩いていたと思ったが、案外距離を歩いていた。気がついたら東京駅の八重洲口が見えていた。南雲さんが話しながらも誘導したんだと思った。
「私は独身主義で、子供も持つつもりがないんです。南雲さんのことは憎からず思っていますが、恋愛感情じゃないと思います」
「そう、なら、少し時間を掛けさせてくれる?」
「前向きに検討とはいきませんが、お返事は保留ということでお願いします。あの、また会ってください。こちらからご連絡しますので」
その夜は、中央線で帰る私をホームまで付いて来て、電車で去るまで見送ってくれた。
南雲さん、好きになれたら良かったなぁと、逃がした魚という訳でもないのに、なんとなくもったいなかったというケチな根性が顔を出す。南雲さんはかなりの優良物件なのだ。
善は急げとばかりに、私は車内から、早川先輩へラインを送った。四方堂君との飲み会という名目で、良ければ近日中に上京しませんか、と。
明日は水曜日。朝はミーティングに始まり、午前中はずっと打ち合わせ。そして、午後から別件の打ち合わせ。
私は資料の準備も出来ているし、明朝から慌てることはなにもなかった。
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