12.三つの恋と三つの愛(一)

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文字通り、あや美はぶっ飛んだ。前のめりだった体は仰け反って椅子の背にぶつかり、椅子がコロコロと後退する。びっくり眼なあや美。 「え、ええ!?ププ、プ?」 プロポーズというワードが気恥しいのか、周りを気にしてか、出てこないようだ。 「うん、そう」 「芽衣子さん!それって…」 私は手のひらを向けてあや美を遮った。 「断ったから」 あや美は、大きく息を吸い込んでなにか言おうとしていたようだけど、私のこの言葉に、息を吐いてなにやら落ち着きを取り戻していた。 「…南雲さんてば、その短時間で、芽衣子さんに惚れてしまったということだったのですね。なんか、南雲さんって、モテるけど振られてばっかですよね」 ん?なにか知ってるのかな? 「南雲さんが振られた相手って、あや美知ってるの?」 早川先輩のことって話したっけ? 「伝説並みの噂ですよぅ。昔、早川先輩に手痛く振られたって話、結構みんな知ってますから。でも、そういえば、それ以外は女子からの片思い話ばかりですねぇ」 確かに、南雲さんからは女の影を感じない…って、そんなアンテナなかったわ。 「あや美、続きは明日、ゆっくり」 パソコンの手が完全に止まっていたのを自覚し、流石にお喋りは自制した。明日の女子会のための残業なのだから、やらねば。 「あ、分かりました。すみません、お邪魔しました」 あや美は帰って行った。 私は、あと2時間と決めて、仕事に集中した。 翌日、金曜日。女子会のことを考えて、朝、室長には根回ししておいた。『定時後は企画室女子会のために残業無きようご配慮を』と。 勿論、室長は喜んで了承してくれた。『この頃は、女性達がキラキラしながら頑張ってくれてるもんだから、僕らも張り切ってるよ』などと歯の浮く様なことを言ってくれた。 張り切ってたのね。本部長から心を入れ替えるように言われたんじゃないのかな?とは、絶対に言えないから笑顔で会釈するに留まった。
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