12.三つの恋と三つの愛(一)

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広瀬は、『コーヒーばっかじゃ飽きるから』と、ココアをいれてくれた。この前の時と同じく、ちょっとほろ苦の。 私は、つい、「このココア、私好きかも」と呟いていた。 広瀬は無言。 「…私のこと、前から見かけていたって言ってたけど、いつからのこと?広瀬はここにいつから住んでるの?」 広瀬のことも聞いてみようと思い、そもそもの事から聞くことにした。 「ここは2年前からだよ。松浦さんのことは割りと初期の頃から知ってた。俺、人の顔は覚えてる方なんで」 「そうなの?なんか、やだなぁ。一方的に知られてるっていうの」 「そお?」 「恥ずかしいじゃない。気の抜けた顔してるの、見られたりするでしょう?特にに仕事帰りの私の顔は酷いから」 広瀬は笑って、そうでもないよと取り繕った。 ふと、机の上のデジタル時計に気がつく。そろそろ4時半になる。帰らなければ。広瀬も論文の仕上げがあるだろう。 「話、聞いてくれてありがとう。論文、頑張って仕上げてね」 そう言って腰を上げた。飲み終えたカップをキッチンまで運ぶと、広瀬がそこまで来てカップを受け取ってくれた。 「論文は頑張るよ。目標があるからな」 「目標?」 「いや、目的か。俺にとっては大事なこと」 「ふぅん。まぁ、頑張ってくれたまえ」 私は、深く追究するのはやめて、広瀬の肩をポンポンとたたいて玄関に向かった。 「ついでに言うと」 と、広瀬は至極マジな感じで冗談を言い放った。 「松浦さんに大変な関心がある。俺と、つき合わない?」
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