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私は靴を履いて広瀬に向き直ったところだった。まるであや美のように、びっくり眼で後ろにぶっ飛んだ。背中にドアを感じ、ドアノブを回して、そのまま後退りしながらフェードアウトしてしまった。
目の前でドアがカチャリと閉まった。もう戻れないと悟り、取り敢えず、ここは自分の部屋に戻ろうと、行動確認。
私、相当狼狽えている…。
今夜は早川先輩が泊まりに来るのだから、準備もしなければならない。
まずは、スーパーに買い出しだ。広瀬に会いませんように。
『広瀬、本気なんだろうか』
スーパーへの道すがら、やっぱり広瀬のことを考えてしまう。
実のところ、『来た』という感じなのだ。出会った時、あの厄日のような雨の日からなんとなく広瀬を警戒してきた。
それは、単にまだ恋愛を始めたくなかったから。
つまり、広瀬とは恋愛が始まる予兆のようなものを感じまくっていたのだ。
南雲さんが私にプロポーズをした理由には思い当たる節があるが、広瀬はどんな理由で、私とつき合いたいと思ったのだろうか。
そして、私は、どうしたいのだろう…。
戸惑い、迷い、狼狽えながら、スーパーで買い物を済ませて戻ると、既に夕方の6時だった。
先輩がお腹を空かせて来るかもしれなかったから、軽く食べられるものを作った。今、お腹を空かせている私は、うどんを作ってお腹に入れる。
すると、先輩から着信。予定通り、あと2時間程したらうちに到着するとのことだった。
先輩は、うちに来るのは初めてなのだが、年賀状のやり取りで住所は知っているのだ。
先輩を待つ間、明日のランチはどこにしようかと調べ始めた。『ついこの前までこっちで暮らしていたのだし、目新しいのは…』と、先輩へのおもてなしで頭が一杯になっていた。
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