12.三つの恋と三つの愛(一)

11/25

49人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
私は靴を履いて広瀬に向き直ったところだった。まるであや美のように、びっくり眼で後ろにぶっ飛んだ。背中にドアを感じ、ドアノブを回して、そのまま後退りしながらフェードアウトしてしまった。 目の前でドアがカチャリと閉まった。もう戻れないと悟り、取り敢えず、ここは自分の部屋に戻ろうと、行動確認。 私、相当狼狽えている…。 今夜は早川先輩が泊まりに来るのだから、準備もしなければならない。 まずは、スーパーに買い出しだ。広瀬に会いませんように。 『広瀬、本気なんだろうか』 スーパーへの道すがら、やっぱり広瀬のことを考えてしまう。 実のところ、『来た』という感じなのだ。出会った時、あの厄日のような雨の日からなんとなく広瀬を警戒してきた。 それは、単にまだ恋愛を始めたくなかったから。 つまり、広瀬とは恋愛が始まる予兆のようなものを感じまくっていたのだ。 南雲さんが私にプロポーズをした理由には思い当たる節があるが、広瀬はどんな理由で、私とつき合いたいと思ったのだろうか。 そして、私は、どうしたいのだろう…。 戸惑い、迷い、狼狽えながら、スーパーで買い物を済ませて戻ると、既に夕方の6時だった。 先輩がお腹を空かせて来るかもしれなかったから、軽く食べられるものを作った。今、お腹を空かせている私は、うどんを作ってお腹に入れる。 すると、先輩から着信。予定通り、あと2時間程したらうちに到着するとのことだった。 先輩は、うちに来るのは初めてなのだが、年賀状のやり取りで住所は知っているのだ。 先輩を待つ間、明日のランチはどこにしようかと調べ始めた。『ついこの前までこっちで暮らしていたのだし、目新しいのは…』と、先輩へのおもてなしで頭が一杯になっていた。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加