49人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
ここという時に良さげなフレンチレストランに決めて、口コミにも目を通し、3名で予約を入れる。と、いいタイミングにLINEの着信が。
『着いたわよ』と、先輩。私は、急いで玄関に向かい、外に飛び出した。
アパートの敷地の前に明るく光るライトは、タクシー。チカチカというハザードの音も低く唸るエンジンの音も、夜の静かな住宅街で木霊しているように感じられた。
先輩は、支払いを済ませ、ボストンバッグを抱えて降りてきた。
「先輩!」
私は先輩を迎えて、遠慮する先輩を抑えて荷物を持った。
「芽衣子さんち、ここなのね。前住んでいた私のアパートからそんなに離れてもいないわよ。一度ぐらい遊びに来れば良かった」
「そういう機会無かったですね。というか、発想が無かったです」
部屋に通すと、先輩は早速ボストンバッグの中から菓子折りと瓶詰めみたいなものを取り出して、『私と母から』といってお土産をまず渡された。お土産が半分ぐらいスペースを取っていたようで、ボストンバッグは途端に軽くなったみたいだった。
温かいお茶を入れて、さっき、大家さんから持たされたぼた餅を『良かったら』とお茶請けに出した。
「あらぁ、芽衣子さんたら、嬉しいわぁ。私の大好物じゃないのぉ」
「え?そうだったんですか?それは良かったです。今日、大家さんから頂いたんですよ。先輩、ラッキーでしたね」
先輩の嬉しそうな顔を見られて、私は幸せを感じていた。
『アパートの大家さんと交流があるの?』と、先輩は驚いていたので、私は鍵をなくした騒動を一通り話すことになった。
案の定、先輩はケタケタ笑っていて、『芽衣子さんは愛されキャラなのよ』 と、目を細めて私を優しく見つめるのだった。
最初のコメントを投稿しよう!