12.三つの恋と三つの愛(一)

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旅の疲れもあるだろうから、まずはお風呂に入りませんかと、誘ってみたところ、先輩は喜んで入っていった。 その間に、寝床を作った。以前、あや美が泊まった時と同じ仕様にして、床にあらゆる寝具を重ねて敷き詰めた。ベッドはもちろん先輩。 先輩が上がった後、私もパパッと入ってきて、楽ちんな部屋着になった。 「明日は新宿でフレンチですよ」 小さなテーブルは、キッチンの寝室との境目に置いて、敷居の柱に私が寄りかかり、先輩はベッドの足元に寄りかかる感じで飲みに入った。 鮭の炊き込みご飯とアボカドとお豆腐のサラダの他、先輩を待ちながらチマチマ作っていたツマミを並べて。 「四方堂君は元気なの?会ってる?」 先輩の新しい仕事や職場の話、故郷での生活や友達付き合いなどをひと通り聞いた後、先輩から聞かれた。 「全く。あ、四方堂君の壮行会はやったんです、企画室で。それぐらいかなぁ?」 「そう…案外あっさりしたものなのね」 「はい。案外、というか、結婚するって奴に縋る精神は持ち合わせてなかったみたいで」 はは、と笑ってしまった。なんか私、軽いかな。 「芽衣子さんは、堅実なのよ。なんか分かるわ」 「堅実…ですか」 先輩は遠くを見つめるような表情で、なにかを思い出している様子。 「芽衣子さんが周りに信頼されるのはね、そういう堅実なところが見えるからかしらね。多少、おっちょこちょいでも、そこは大事なんじゃないかな。わかる人には分かるのよ」 えぇ…そうなんだ。私はくすぐったくて、照れていた。
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