12.三つの恋と三つの愛(一)

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ミスリードになるかもしれない。でも、私は、それと気づかれない程度に必死に先輩を説得していた。 数分の間、先輩は無言だった。きっと迷っているに違いなかった。だから、頭ごなしに否定することはないと踏んでいた。 先輩の深い吐息。私は耳を澄ます。 「…で?まさかと思うけど、明日、会わせる気なの?」 「まだなんとも…南雲さんにはなにも話していないですし。でも、先輩が会っても構わなければ」 「私に会うわけがない…あの人が」 そんな…そうだ、先輩は南雲さんに対するイメージが古い。 「あの頃の、先輩が知る南雲さんと今の南雲さんはだいぶイメージが違うと思いますよ。それに先輩が思っているよりずっと、あの頃の南雲さんの先輩への気持ちは強かったんだと思います」 私は、本人から聞いていた、真山さんにガンつけに行ったという話をした。 「…でも、それは自尊心を傷つけられたからじゃない?そういう人なのよ」 「私は違うと思ってます…恐らく、真山さんという人となりを見極めに行ったんじゃないかと。もちろん、先輩を任せられるかの確認ですよ。先輩が幸せなら身を引くことは厭わなかったんですよ」 ここは想像だったけど、恐らく寸分も違わない自信はあった。 そろそろ寝ましょうかと、声を掛ける。 「もしも明日、会えそうだったら会っておいても良くないですか?」 最後のひと押し。すると、10秒ほどためて、先輩の呟きが返ってきた。 「そうね」 全く嬉しそうな声じゃなかったけど、ポーズかもしれないじゃない。とりあえず、明日!
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