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ミスリードになるかもしれない。でも、私は、それと気づかれない程度に必死に先輩を説得していた。
数分の間、先輩は無言だった。きっと迷っているに違いなかった。だから、頭ごなしに否定することはないと踏んでいた。
先輩の深い吐息。私は耳を澄ます。
「…で?まさかと思うけど、明日、会わせる気なの?」
「まだなんとも…南雲さんにはなにも話していないですし。でも、先輩が会っても構わなければ」
「私に会うわけがない…あの人が」
そんな…そうだ、先輩は南雲さんに対するイメージが古い。
「あの頃の、先輩が知る南雲さんと今の南雲さんはだいぶイメージが違うと思いますよ。それに先輩が思っているよりずっと、あの頃の南雲さんの先輩への気持ちは強かったんだと思います」
私は、本人から聞いていた、真山さんにガンつけに行ったという話をした。
「…でも、それは自尊心を傷つけられたからじゃない?そういう人なのよ」
「私は違うと思ってます…恐らく、真山さんという人となりを見極めに行ったんじゃないかと。もちろん、先輩を任せられるかの確認ですよ。先輩が幸せなら身を引くことは厭わなかったんですよ」
ここは想像だったけど、恐らく寸分も違わない自信はあった。
そろそろ寝ましょうかと、声を掛ける。
「もしも明日、会えそうだったら会っておいても良くないですか?」
最後のひと押し。すると、10秒ほどためて、先輩の呟きが返ってきた。
「そうね」
全く嬉しそうな声じゃなかったけど、ポーズかもしれないじゃない。とりあえず、明日!
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