12.三つの恋と三つの愛(一)

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「いや、揃いも揃ってって、2人だけじゃなくて。俺もだよ。揃いも揃って、この3人ってこと」 椅子の背に寄りかかり、お代わりに注文したビールを煽る。 「え?なになに」 やけに嬉しそうに、先輩が食いついた。 四方堂君は、顔の前で手を振って、話さないよと抵抗を見せたが、先輩の追及に負けた。 「俺って、つくづく結婚に向いてないと思う。今、切実に思ってる」 ぶはっ。四方堂君たら、デキ婚でいきなりの結婚だったものだから、今更のマリッジブルー?ふんだ。私は同情しないから。 四方堂君の愚痴はほんのちょっとで終わって、結局、仕事の話。先輩も古巣の事だからか、興味を示して話は弾んだ。 食事は粗方済んで、デザートを待つだけになって、私はお手洗いに立った。 お手洗いから出て席を見ると、2人は楽しそうに語らっている様子が伺えた。 私は携帯を取り出し、南雲さんに電話を掛けた。呼び出し3回で本人の声。 「あ、南雲さん?」 「松浦さん?やっと連絡くれたね」 そうだった。そういう状況だったっけ。 私は改まって、今、話ができるか確認してから、すぐ様本題に入った。 「今から新宿に来られますか?来られるとしたら何分後ですか?」 え?どうしたの急に、との南雲さんの問い掛けを無視した。今、説明に時間を掛けられない。 「早川先輩と会いませんか?今すぐ、このあと」 「…」 数十秒、沈黙。私は待った。 「…45分後、東口のティアラ。会うよ」 よっしゃぁぁ!
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