12.三つの恋と三つの愛(一)

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「…久しぶり」 「お久しぶり、です」 こんなぎこちない早川先輩と南雲さんを初めて見た。お互いにはにかみながら改まって挨拶を交わしていた。 「やっぱり2名で」 私は速攻で、コンシェルジュに言い、は?となったコンシェルジュと、先輩達に『じゃあ、私達はこれで』と言い残し、四方堂君の袖を引っ張って店を出た。 「おい、どういうこと?なぁ…そういうこと?」 四方堂君が歩きながら私の背中に言葉を投げた。 「そ。そういうこと」 「おお!」 四方堂君は頬を紅くして瞳をきらきらさせていた。 「なんだよ、これ。お前、これは…」 なんだか興奮著しいので、走ってやった。四方堂君は笑いながら追いかけてくる。 私は手近なカフェに入った。 カフェは賑わっていた。明るい店内は木目が清々しい印象で、心無しか、お客さんも明るい雰囲気だ。 コーヒーを注文して、受け取って小さなテーブルに運ぶ。四方堂君は、ニコニコして、私の説明を待っていた。 「南雲さん、俺らのこと完全に眼中になかったな」 確かに、南雲さんは店に入るとすぐ、早川先輩を見つけ、その視線を一度も外さなかった。 「それが全てを物語っていると思わない?」 「うん…そうだな」 四方堂君は、恋愛が下手だ。今にして思えば、そうなのだと合点がいった。 誰かを必死に追いかける時、なり振りなんて構ってなんかいられないのだ。 「一度掴んだら、もう絶対に離してはダメ…」 私は意味深な言葉を吐いたらしい。四方堂君は少し黙り込む。 早川先輩からライン。『南雲さんといろいろ話し込みそう。遅くなるけど、芽衣子さんのアパートに戻るからね』とあった。 良かった。たくさん話してお互いさらけ出せれば、きっと理解し合えるはず。 私は思いを込めてOKスタンプを送った。『幸せを掴んで、先輩!』
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