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「あの2人、上手くいくと思って、計画していたのか?」
コーヒーを飲んでしまって、手持ち無沙汰に、四方堂君が話してきた。
「計画はしてないよ。ただ、こういうタイミングは計っていたかな。まぁでも、南雲さん次第だった」
「先輩には了解済み?なんで芽衣子は、あの2人が上手くいくと思ったわけ?」
私は、よくよく考えた結果ではなかった。言わば直感だ。
「先輩には昨夜、会いませんかと聞いていたの。その時の感触と、南雲さんについては、彼の一途さに気がついたせいかな…」
「え、一途なの?あの人」
四方堂君が驚いていた。
プレイボーイとまではいかないけれど、かなりのモテ男だったらしい南雲氏が、恋愛のプロみたいに思われていても不思議はない。社内にしても、女性のあしらいが上手かったのは想像がつく。
私はおかしくなってきた。辛い恋だったのに。心が痛くて辛くて泣きに泣いた幾星霜。その相手が目の前にいて、他の人の恋愛について驚いたり喜んだり。
南雲さんが、実はまだ早川先輩のことを忘れていないのではと確信したのは、あや美のひと言からだった。
『…それ以外は女子からの片思い話ばかりですねぇ』と、南雲さんの噂について話していた。
もしかしたら、まだ早川先輩のことを思っていた?いや、それは相当南雲さんらしくない。
恐らく、先輩への気持ちは封印して、心の片隅に追いやったのだろう。但し、大事にしまい過ぎたのだ。
誰かを本当に好きになれば、先輩への思いは押し出されてしまっただろうけれど、きっと、自分より大切な人が今まで現れなかったのだ。
私にプロポーズしたのは、私なら上手く付き合えそうだと考えたから。とても理性的な愛だったのだ。
理性なんて、本能と相対すれば簡単に蹴飛ばされる。やはり、南雲さんにとっては、先輩が本望だったのだ。
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