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「あのあと、すんなり話ができたんですか?なんだかぎこちなかったですけど」
からかいではなく、私は真面目に聞いた。
「そうね…あのあとは、南雲さんに上手くエスコートされて、程なくいつもの調子に戻れたと思うわ」
いつもの調子というと、先輩の場合、真面目な感じということか。なるほど。
「それでそれで?世間話とかは端折って話してくださいよぅ」
「南雲さんは世間話はしなかったわ。まず、私にこう言ったの…こうやって君と会えるなんて、僕の夢が叶った瞬間だって」
「ほぉぉ…なかなか」
私は体のどこだかがくすぐったくなっていた。人の惚気話はこそばゆい。南雲さんめ、私へのプロポーズは完全消去したのだろう。
「それでね、私は、もっと早く、ずっと早くこうして会ったら良かったけれど、私には決心がつかなかったって話した…不妊のこと」
その点は大丈夫だったはず。私は喉を鳴らして唾をゴクリとやった。
「話されたのですか?大丈夫、でした?」
ふふっと、先輩はまたまた笑った。
「芽衣子さんが、南雲さんからのプロポーズを断った時、その事を我がこととして南雲さんにぶつけてくれたのよね?聞いたわ」
おっとびっくり。南雲さん、血迷ったプロポーズのこと、先輩に話したんだ。
「南雲さんはなんて?」
私は恐る恐る聞いてみた。
「もちろん、芽衣子さんに答えた通り、問題なしなんですって」
でもだからと言って、先輩は有頂天にはならないだろうと予測はつく。
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