49人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
「南雲さん、先輩にプロポーズしたんですか?」
「場所を変えてからね。なんでも、親戚がやってらっしゃるというお店に連れて行ってくれたの」
先輩の話だと、そのお店というのは新富町にある小料理屋さんで、南雲さんが電話を入れてからお店を訪れた時、お店は貸し切り状態だったという。先輩は、急遽その様にして待っていてくれたと感じたのだそう。
きっと南雲さんは、大切な人を連れていくとか、親戚にそう話したに違いないなと私は思った。
「そこで食事をして、女将さんが話に入られて…南雲さんの、親代わりなんだそうよ。私が、遠距離だけどお付き合いしたいと女将さんに言ったら、南雲さんがね、いっそのこと一緒に暮らそうって」
「へぇえぇぇ…」
南雲さんは、案外訳ありの家庭なんだろうか。それはともかく、即同棲って…。
同棲については、先輩は悩んでいるようだったけれど、この調子だと、2人の結婚報告もそう遠くない気がする。
「芽衣子さんにとても感謝してるって、南雲さん。私もよ」
私も嬉しい。
この日は飽きるまで先輩と語り合った。翌日は仕事だったけれど、室長達には午後出社と、話しはついていた。
2時過ぎに、私達は寝床に入った。結局、私の話はしなかった。自分の話で、少しでも先輩の幸せ話を薄めたくなかったから。私も幸せに浸りたかったから。
翌日、東京駅まで先輩を送って行くことにした。
すると、新幹線の改札口に南雲さんの姿が。私は南雲さんに意味深な視線を送ってから、先輩に、『またちょくちょくこっちに来られるだろうけど、私のところへも寄ってください』と言って先輩と別れた。
南雲さんは、先輩に付いて中に一緒に入っていった。
まさかと思ったけど、まさか高松まで行かないよね。
最初のコメントを投稿しよう!