13.三つの恋と三つの愛(二)

4/24

49人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
「南雲さん、先輩にプロポーズしたんですか?」 「場所を変えてからね。なんでも、親戚がやってらっしゃるというお店に連れて行ってくれたの」 先輩の話だと、そのお店というのは新富町にある小料理屋さんで、南雲さんが電話を入れてからお店を訪れた時、お店は貸し切り状態だったという。先輩は、急遽その様にして待っていてくれたと感じたのだそう。 きっと南雲さんは、大切な人を連れていくとか、親戚にそう話したに違いないなと私は思った。 「そこで食事をして、女将さんが話に入られて…南雲さんの、親代わりなんだそうよ。私が、遠距離だけどお付き合いしたいと女将さんに言ったら、南雲さんがね、いっそのこと一緒に暮らそうって」 「へぇえぇぇ…」 南雲さんは、案外訳ありの家庭なんだろうか。それはともかく、即同棲って…。 同棲については、先輩は悩んでいるようだったけれど、この調子だと、2人の結婚報告もそう遠くない気がする。 「芽衣子さんにとても感謝してるって、南雲さん。私もよ」 私も嬉しい。 この日は飽きるまで先輩と語り合った。翌日は仕事だったけれど、室長達には午後出社と、話しはついていた。 2時過ぎに、私達は寝床に入った。結局、私の話はしなかった。自分の話で、少しでも先輩の幸せ話を薄めたくなかったから。私も幸せに浸りたかったから。 翌日、東京駅まで先輩を送って行くことにした。 すると、新幹線の改札口に南雲さんの姿が。私は南雲さんに意味深な視線を送ってから、先輩に、『またちょくちょくこっちに来られるだろうけど、私のところへも寄ってください』と言って先輩と別れた。 南雲さんは、先輩に付いて中に一緒に入っていった。 まさかと思ったけど、まさか高松まで行かないよね。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加