13.三つの恋と三つの愛(二)

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少し早めのお昼をとろうと思い、丸の内口からパン屋さんを目指した。以前から行きたかったお店。『混んでるかなぁ』と店先から中を覗けば、女性客がビッシリと席を埋め尽くしていた。 平日のランチに沸く丸の内OLの図…なら、少し待とうと、店員に告げ、先にパンを幾つか買いながら待つことにした。見ると、スーツを着た男女の列が表に並ぶ。 どうやら、今店内の席を占めているのはOLさんばかりでもなさそう。『人気店だもんね』 15分後、意外に早くテーブルが空いた。 ランチメニューは具沢山のスープとパン。ゆっくり味わって食べる。『ううん、おいしいぃ』 1人で悦に入ってたら、肩をポンと叩かれた。見ると、はっ、なんということ! 「ひ、ろせ?なんで?」 「ちょっとこっちに用があって」 広瀬が親指で指さす方向に目を向けると、若いのから年寄りまでのスーツ姿の男性数人が、店の外からこちらをニヤニヤ顔で見ている。広瀬の連れなのか? 「だからっ、見かけたからっていちいち声かけなくたって…人待たせてるじゃない。アパートに帰ればいつでも会えるでしょうに」 そこまで言って、私は『はっ』と思い出していた。広瀬が、最後に私に言った言葉を。 「あらそう。なら、今夜帰ったら行こうかしら」 広瀬はなぜか女みたいな言葉でそう返し、連れの中に戻っていった。 『いやはや、これはどうにか進展するものなのだろうか』私は幾らか他人事のような気でいた。 恋愛事から離れていたくて、広瀬との距離を縮めないようセーブしていたからか、我が事ながら感情が沸き立たなかったのだ。
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