13.三つの恋と三つの愛(二)

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6時過ぎにはデスクは粗方使用者が去り、オフィスの人は疎らになった。相変わらずの私は焦っていた。 『焦ってはだめ。失敗する』私は私を牽制した。 予定では、みちるに頼むはずだったコピー。12ページを30部、さぁ終わった、というところで私はうっかりミスをやらかした。A4をB4にコピーしてしまった。誰も見ていないフロアーで、コピー機を抱き抱えガックリと頭を落とす。 『お前とはいつまでも分かり合えないものなのかい』と、私はコピー機に語りかけていた。ここまで相性が悪いと、擬人化してしまうのも人情ではないか。 だが、それは逃げだと冷静になる。吐息一つ。 相性などではない。そもそも私のケアレスミスなのだ。機械には指示以外のことなどできないのだから。 コピーをし直して、退社したのは8時過ぎだった。残業申請は私のミスを引き算した時間だ。プライベートが暇で良かった良かった。 電車とバスに揺られ、アパートに帰り着いた。先輩のために買い物した残りの食材で食事をしようと、あれこれ考え中だった。 「遅かったね」 びっくりした…広瀬は、私のアパートの2階に上がる階段に座り込んでいた。 「広瀬…アンタ完全ストーカー」 そうと本気で思ってはいなかったが、流石にこの状況を許してはイケナイ気がする。 広瀬は、ゆっくり立ち上がり、 「俺も帰ったばかりだよ。もう帰ってるかと思って来たらまだなんで、ちょっとだけ待つつもりで。本当にちょっと待っただけだよ」 「言い訳かっこ悪い」 私は、気にもかけない素振りで広瀬をやり過ごし、部屋の鍵を開けた。 私に続いて広瀬も入ってこようとする。それも思いっきりナチュラルに。 「わ。ちょっ、何考えてんの!?うら若き乙女の寝所に!」 私の抗議は広瀬に届かない。私を押し退け、靴を脱いで上がり込んでしまった。 「ふぅん、キレイなもんだね。流石。でも、フリフリもキラキラも何もないね」 「色気がないって言いたいんか」 わははと、広瀬は笑い出す。私の色気がないことに笑う要素あるんだ…。
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