13.三つの恋と三つの愛(二)

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ドキドキもワクワクもない。平常心の私。ひとり、部屋で、二つの湯のみを見つめながら、広瀬は本気だったのだろうかと考えてみた。もちろん、伊達や酔狂でそんなことは言えないことはわかる。普通ならね。 出会ってこの方、広瀬の常人離れした言動しか見てきていない気がするのだ。 あれが、例えば、『好きだ。付き合おう』とか『愛してる。結婚を前提に…』なら、まぁ、受け入れる余地はあったと思う。とにかく、残念だ。何かが始まるはずだったものを。 お風呂と食事の準備をサクッとやって、のんびりテレビを観ながら食事をした。 夜もだいぶ更けてきたので、ベッドに入った。12時を回っていたけど、あまり眠気も来なくて、携帯でネットニュースでもチェックしようかと開いたら、早川先輩からのLINEが1時間以上も前に来ていたのに気がついた。 『あの後、見送るだけの南雲さんが、一緒に新幹線に乗ってきてしまって、結局、高松まで来てしまいました。来たらやはりということで、急に両親への挨拶になりました。今夜はうちに泊まって貰っています。また報告するね。芽衣子さんの話も聞きたいから、間を空けずにまた上京します』とあった。 南雲さん…彼は衝動的に動く人には見えない。計画していたんだろうか。結婚したがっていたからなぁ。 とりあえず、先輩からは戸惑いより嬉しそうな感じが伝わったので、ここは『良かったですね云々』と返した。 4月に入った時点で、我が部署への新人の配属はないと聞かされていたので、なんとなくフレッシュ感のない感じで時期を過ごすも、突然降って湧いた朗報。新人礼賛。 採用時点では総務部配属が決まっていた男子社員1名を企画室へ引っ張ったらしい。多分、本部長だ。 あや美が仕入れてきた情報によると、総務から1人退職者が出ていて、採用の段階で人事に申請していたそうなのだ。 田部君という大卒者で、本人も総務部配属と聞いていてその心積りだったそうで、可哀想に。
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