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その日帰宅すると、アパートのドアノブになにかがぶら下げられていた。コンビニの袋だ。『?』
中を覗くと、お汁粉の缶と白い封筒。缶はまだ温かい。大家さんかと思いきや、封筒には広瀬とあった。
『この前は突然ごめん。俺は振られたのだろうかと、諦めの悪い気分でいます。出発までひと月あるし、それまで付き合ってみて、お互いをもっと良く知り合えたらと考え直しました。』
「なんか尻切れトンボな手紙だなぁ」
率直な感想がつい口に出た。考え直した先は?もう、やんなる。
でも、なんだかんだ言っても、心がホンワカしている自分を認めざるを得ない。
『広瀬のペースに飲まれてやるかぁ』
缶のプルトップを開けて、甘いお汁粉を味わった。
取手&田部コンビが誕生した我が部署には、これまでに無い、新しい風が吹いていた。
取手さんは中堅ながらなかなか柔らかな人で、恐らく田部君にはいい感じにフィットしたのだろう。2人は会話が途切れずやり合う。時に言い合いもし、丁々発止のやり取りは、周囲がそれを楽しむようにもなった。
金曜日には、取手さんの号令で、企画室が全員集合になった。
二次会には四方堂君も来ていて、早速、田部君と馴れ合っていた。
「田部君には気を使わなくていいわぁ」
私はあや美と田中君相手にいい調子で飲んでいた。
「田部君て、顔も中の上か上の下だし、愛想がいいからか今年の新人の中では人気ナンバーワンよ」
「え?あれが!?」
あや美と田中君だ。田部君が上の下なら、田中君は中の中だろうか。愛想も普通で、ホント普通の子。
そんなことを心の中で考えていたら、みちるもやってきて、早川先輩の話になった。
女子会での報告会をここでやってしまおうということになり、田中君はいたけど、無視して話し始めた。
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