13.三つの恋と三つの愛(二)

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週末。午前中はいつもの通り過ごした。午後にあや美が来るというので、駅に迎えに行きながら一緒に買い物をした。 あや美はとても楽しそうで、ここしばらく塞いで見えたのは気のせいだったかと思い直したぐらいだ。 アパートに戻ると、あや美が手土産として持ってきてくれたケーキを頂きながら、話題は恋愛事にスライドしていく。 すると、途端にあや美の口調が重くなった。どうやら、あや美の悩みは恋愛らしいと私はピンときた。 元気づけにと、私は広瀬の話をした。とても恋愛話とは言えないまでも、それらしい展開は期待していると話したところ、あや美の表情がなんとも言えず悲しげになってしまった。 「あや美…どしたの?なんか、悩んでるんなら、話してみて。相談のるよ」 私は優しく言った。 その時、珍客が現れた。広瀬だ。 「あれ?またお客?じゃあ、混ざろっかなぁ…」 いつもの軽い調子で上がりこもうとした広瀬に、あや美が突然攻撃的に噛み付いた。 「ちょっと!あなた何者?まだ芽衣子さんの彼というわけでもないのに、軽い!軽すぎる!それに変人!」 「あや美?」 私は驚いたが、今日はあや美とのプライベートなのだから、端から広瀬を誘う気もなかったのだが。 広瀬はあや美に恐れおののき、謝って直ぐに帰っていった。 あや美は『取り乱してすみません』と言って、お詫びに晩ご飯を作ると言ってくれた。 2人でキッチンに立ち、アレコレと料理しながら、ワインも既に飲み始めていた。これがいいのよ、と言いながら。 ただ、あや美にはあまり良くなかったかもしれない…。
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