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「…私ぃ、あんまりいい恋愛してこなかったんです…」
おいしそうなグラタンとスモークサーモンのサラダ。私が作った鱈のホイル焼きが小さなテーブルに並ぶ。
あや美は話しずらそうに、ポツポツ話し出した。見ると、ワインは1本空になっていた。あらぁ…。
「最初の彼は調子いいだけのヤツで、高校生の私にバイトさせてデート代出させてたクズでした」
「えぇ…最悪。すぐ別れたの?」
「はい。まぁ、しばらくグズグズは言ってましたけど、最後は他の子見つけたようで、あっさり」
「やぁねぇ」
あや美って子が、どんな恋愛をしてきたのか、実は想像すらしたことがなかった。それぐらい、遠のいていたのか、私に気を使わせていたのか。
「…次の彼が、最後の彼氏なんですけど…こいつもクズのゲス野郎でした。私、四股掛けられていたんです。しかも、私が4番手だった」
「うあ…キツい…辛かったね。話して大丈夫?」
「はい。それにもう、恋愛は懲り懲りになりました」
「そっか…」
そんな女の子もいるとは聞く。付き合うやつがドイツもコイツもクズに当たるのだ。まさか、あや美がね。可哀想に…。
その後、泣き上戸のようになったあや美の話は更に続く。
グラスに半分残っていたビールを飲み干し、あや美は一瞬躊躇いを見せたものの、一人語りの告白が始まった。少し呂律が怪しかった。
「恋愛はもう懲り懲りなんです…男運が悪かった過去と決別したかった。でも、初めは自覚なく、自然に恋をしていた」
「あら、それは良かったじゃない…」
「私…芽衣子さんへの気持ちは恋心としか思えないんです」
え、私?
思いがけない告白だった。ドキドキしながら、あや美を見つめた。
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