13.三つの恋と三つの愛(二)

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夕方まで、ランチしたお店に長っ尻して、名残惜しそうなあや美を改札で見送り、私もアパートに向かった。 『帰りにスーパーに寄って、昨夜の残り物でご飯を食べる。お風呂にゆっくり入って、テレビを観ながらスキンケアはスペシャルにしよう…』などと、この後の工程を頭に描いた…。 正直惹かれている広瀬と付き合い、その結果としてアメリカについて行くのか、あや美のためにも会社に残るか。時間は余り無いが、しっかり悩むことにした。 結婚は…やはりしたくない。両親のことに安心できるまでは…。 実家のことは、これまでも長く悩んできた。その悩みをなんとか克服しようと奮闘したこともなかったわけではない。 でも、私がなにを言おうと、どう感じていようと、両親へは通じなかった。 この後に及んで、なにをどう考えたらいいのか…。 ただ、両親に呆れながらも、反面教師として学んだことはある。社会に自立することだ。誰かを頼ることなく、自分の2本の足で立つ。それを無くして、自立は叶わないと。 片手に持てるだけの量の買い物をして、アパートに着いた。数歩前に広瀬のアパート。一旦、立ち止まり、部屋の灯りを確認するが、暗い窓に気持ちが沈んだ。『昨日の今日で、私はなにかを期待しているのだろうか…そりゃ、期待もするわ』苦笑だ。 手紙の返事を書くべきか…正直、手紙は苦手なのだ。思っていることの半分も、文章に出来はしない。携帯のメールじゃない手書きの手紙なんて中1以来だ。 それから毎日、手紙のことが頭に引っかかっていたが、一行も書く意思すら湧かないで、だが、気持ちは固まってきていた。 広瀬とはちゃんと付き合うことにした。とは言え、今まで男性とちゃんと付き合ったことがなかったなと自虐。 とりあえず、暇な土日を一緒に過ごそうと思う。広瀬が渡米するまでの…嗚呼もう、あと3週間しかない。1週間も悩んでいたことが悔やまれる。 だけど、改まって『付き合って』と言うのが恥ずかしくて、あれこれとアプローチを悩んでしまった。もしかしたら、渡米するに当たって、広瀬もいろいろ忙しいかもしれないなとか、そんな臆病風にも吹かれていた。
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