13.三つの恋と三つの愛(二)

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一年後。 私は今、シカゴにいる。『bar シカゴ』でも『Hotel Chicago』でもない。アメリカのシカゴだ。 そう、私は広瀬芽衣子になったのだ。 冬吾とは、あのあと3週間、時間の許す限り一緒に過ごした。あ、冬吾というのは広瀬の名前。冬生まれだから冬吾なんだそう。 意外なことに、私達は、お互いがとても楽だと感じていた。親密になるのに時間はかからなかった。 そして、冬吾の渡米を機に遠距離恋愛へ。 私はその時点で、まず、あや美に報告をした。きちんと向き合って話しをした。1年後に退職して、広瀬のあとを追って行くことを決めたと伝えたのだ。 あや美は泣いた。『芽衣子さんと離ればなれになるなんて』と。 だから、私は言った。『これからは、私とあや美は家族だよ。距離が離れていても、心の絆は絶対に切れることはないのよ』と。 あや美は更に泣いたけど、嬉し涙のようだった。 あや美に関しては、その後暫くして、田中君から正式に交際を申し込まれたそうで、なんだか楽しそうな恋愛話にこっちもホンワカした。 田中君なら安心だ。少なくとも『ゲス』には見えない。 私の退職の意思は、あや美と同時期に、本部長にも伝えた。 本部長は最初驚いていたが、快く祝福してくれた。ただ、『芽衣子君は、定年まで勤めるだろうとの目算は外れたようだなぁ』と、嬉しそうに笑っていた。更に、『四方堂と一緒になるんだとばかり思っていた』とも。 四方堂君は今、産まれてきた女の赤ちゃんにメロメロだ。週に一度は撮りまくった画像を添付したメールが送られてくる。 ちゃんとパパになってるじゃないか、と安心している。案ずるより産むが易しだったね、四方堂君。
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