1.厄日

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周りに合わせながら大人しく飲んでいた。アルコールには弱くはないが、酒豪という程でもなく。 むしろ、好きなお酒を好きな時に好きなだけ飲みたいというのが信条だった。これは勤め人にはそぐわない信条でもある。 宴もたけなわ。島に収まらず大声で笑い合ったり、意見交換が始まった。隣同士で黙々と話し込む人たちもいて、様々に賑やかに宴会然としてきた。 そして、頃合いと見た四方堂君の仕切りで、最初の席替えが行われた。 輪の内側の者は、各自、自分の皿と箸とグラスを持ち、次の島へ移る。 各々、移った先も同じ職場のいつもの面々なのは変わらないから、酔いも手伝い、盛り上がりは変わることがなかった。 お料理は絶妙なタイミングで出てくる。一つの皿に乗った料理は適量が各島に置かれた。 アジアンテイストなのは確かだが、ベトナム料理が主軸にあるかもしれなかった。 例えば、鶏肉のカシューナッツ炒めは中華の定番だが、オーソドックスな味付けではなく複雑な味付けだった。それに、盛り付けが素晴らしく美味しそうに見せている。 新しいお料理が出される度にどよめき、『おぉぉ!』となり、食べてまた唸る。感動している、皆。四方堂君、内心ガッツポーズだね。 そして席替え。次の島は、フロアーでも一番の年長者の男性がいて、この人とはいくらか親しく言葉を交わしてこられていたので、顔を見たら気が楽になった。
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