1.厄日

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「あ、四方堂君?どうしたの?金額合わないの?」 電話に出た四方堂君は、あや美と相談して、とりあえずお店には自分が立て替えて出てきたと言った。 「これからあや美ちゃんと一緒に合流しよう」 傍にあや美がいたのだろう、さも呼び戻すような言い方をした。 「うん、わかった。じゃあ、南口の『ノーサイド』で」 私は場所を駅前の喫茶店に変更した。barでする話ではない。 しかし…どういう事だろうか。 私は少し酔っていたけど、あの時の記憶に曖昧さは微塵もなかった。 確かにかっきり10万円集めて、三度確認した。千円札もあったし5千円札もあった。だから、洗面台の余白を駆使して、間違いがあって当然という気持ちで確認をしたのだ。 会費は1人5千円。掛ける20人でちょうど10万円。いつもそう。職級で会費に差がない。新人だろうが本部長だろうが。多分、幹事たちのズボラさから来た慣習だと思うけど。 ただ、私も何度か幹事をしてきたから分かる。本部長のポケットからはあと2万は出ているはず。 それを踏まえて、一律の会費を設定しているのだ。 その時その時の飲み会のトップが室長なら室長が、その下の社員同士なら年長者が。そういう職場なのだ。これは全社的ではなくうちだけだと、早川先輩が教えてくれた。 四方堂君たちとの合流は早かった。多分、私からの連絡を待つことなく、合流は決めて動いていたのだろう。待ち合わせの喫茶店に入って、注文したコーヒーが来る前に2人が現れた。
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