2.終わりと始まり

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「芽衣子さぁん。もぅ、なにがなんだか…」 混乱したように、私の顔を見るなりあや美が泣きついてきた。この子がパソコンのデータを消してしまった時の事を思い出す。 「本当に足りなかったの?幾ら?私、ちゃんと確認したよ。で、封をして一旦バッグにしまって、そのままあや美に渡したんだよ」 私は信じられない思いだったが、それは現実に起こったことに違いないとも思っていた。だって、でなければ、今、この2人がここにいるなんてことはないのだから。 「まぁ、ちょっとこれ、見てよ」 四方堂君がポケットから出したものは、折りたたまれた封筒だった。会費が入っていたものだろう。 「ここ、芽衣子の割り印あるだろ?」 「芽衣子さんたら、しっかりしてるんだか抜けてるんだかって、割り印見て四方堂さんと笑ってたんですぅ」 私は苦笑いで返した。やっぱ、笑われたか。 「封は上を切って開いたのね」 割り印はそのままで、開封の跡はギザギザだったから、あや美が爪で開けたんだろうと察しが付いた。 私は、目を近づけて、その割り印をしっかり見てみた。 「うぅん…分からないな」 この状況だと、私が着服したみたいじゃないか。身の潔白はどうやって証明したらいいのだろうか。少しずつ迫るように緊張感がやって来た。
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