2.終わりと始まり

4/32
前へ
/310ページ
次へ
たっぷり5分も考えていた。2人がなにを考えていたのかは分からないけど、私は、誰かが盗ったのなら、なんのために?というところが気になっていた。 あの時、バッグは初めに座った席の背もたれに掛けっぱなしだった。周りに目はあるし、あの場で盗みを働くなんて不可能としか考えられなかった。やったのなら、かなり大胆だ。 そして、全部でなく、少し盗って細工をするというのは、お金欲しさよりもっと陰湿な嫌がらせの匂いがしてくる。 「これは、私への嫌がらせなんじゃないかな?」 今、考え至ったことをすぐ言葉にしてみた。だが、その言葉の威力はすごかった。私はこんな事をされるほど、人から疎まれるか嫌われていたんだと、これ以上ないほど落ち込んでしまった。 「芽衣子さぁん、大丈夫ですよぉ。まだそうと決まったわけじゃないし。芽衣子さんの数え間違いという線も捨てたわけじゃないですから」 それ、あんまり慰めになってない。 「だから、私はハッキリ覚えてるのよ。言われていた10万円、確かにあったこと。全部封筒に入れて、シールの紙をペリペリ剥がして封をして、割り印を押した。ハッキリ記憶に残ってるの!」 ずっと考え事をしていた四方堂君が、腕組みを解いて、真っ直ぐ私の目を見つめた。 「俺は信じるよ。芽衣子は抜けてるけど、これまで、金銭の問題だけは起こさなかった」 「四方堂君…」 見ていてくれてたんだ…単純に嬉しかった。 目をうるませていたけど、四方堂君はスルーした。そして、再度、封筒を凝視した。 すると、「なぁ、これってさ…」と、初めの割り印を指さす。 「芽衣子、お前って、印鑑押すの下手だったよな、昔から」 あ、そうだ。と思い出す。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加