2.終わりと始まり

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いくら考えても、想像の域を出なかった。 思い切ってあや美に聞いてみようか。 みちると直接その話をしたのはあや美だ。どんな事をどんなふうに話したか。私のことは話題になったか…。 状況としては、私は会議室にいなかったと言うだけで怪しいっちゃ怪しい訳だし。 更に言えば、お互い、日頃からほとんど会話らしい会話をしない。良好な関係とは言えないかも。 正直、派遣社員との間には溝のようなものがあった。私自身が意識して、社員と分け隔てをしてきたと思う。 だがこれは仕方の無いことだった。 主任の話があった時、本部長と室長から正されたのだ。 『派遣に業務以外のことに首を突っ込ませるな。プライベートを分けろ』と。 私は直感的に、何かあったのだと解釈した。 その時からひと月ほど遡って、急に派遣の1人がやめて行った。ちょっとバタついたような印象が、社内の上の方にあった。 その後、早川先輩が退職したのは、そうと考えれば、なにかの責任を取らされたのかもしれない。寿退社ではなかったし、退職の話はギリギリまで聞かされなかった。 大手のことは知らないけど、我が社の企画室はいろんな業務が混在した部署だった。商品企画だけでなく、営業の補佐的な事もやるし、内部には新規商品の情報が常にあった。 実際、私のメインの業務は、市場調査のデータと新商品のデータ管理、及び資料の管理だ。 会議に掛けるデータを揃えたり、あや美に指示してマップ化したりする。あや美はこれが十八番なのだ。大学の卒論テーマだとかで。
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