2.終わりと始まり

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派遣社員にはもっと雑務的なことをルーティンにしているが、資料作成が多いので、自然、機密にも触れられる。 私は室長から具体的に、作成資料の部数を管理することと、破棄資料についても必ず確認することなど、細かい指示を受けていた。 派遣の2人には、上の指示だなどと一々釈明なんてしない。だから、抜けているくせに派遣には細かいヤツと思われていると思っている。 特にみちるには、そう思われていそう。私が主任になってから入ってきたのだから。 もちろん、あや美にも、プライベートを分けるよう、私から指導もしており、あの子なりに理解してくれた。 でも、あや美は案外上手くやれているようで、仕事上のつき合いだけでも、彼女達との関係性は良好に築けているみたいだった。 結論は頓挫したままだった。 コーヒーを温かいうちに飲み干し、私はバッグを持って店を出た。 「ありがとうございました」との、若い店員の声が優しげだった。 時刻は11時。もう、終バスはない。駅についたらタクシー乗り場で並ぶだろうかと、小さなことが億劫で気にかかっていた。 酔客の多い中央線内で、夜の街並みを眺めて心を空っぽにした。でもそのくせ、窓ガラスと夜の闇が映す自分の顔を見つめることはやめられない。 疲れて弛んだ頬が恥ずかしいほど劣化して見える。髪がペチャンコかと思えば、毛先はパサパサのボサボサだった。 疲れた目がキツく私を見返す。いいかげんうんざりするのに、見るのを止められなかった。
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