2.終わりと始まり

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アパートに入りかけて、もう一度敷地から出る。気になって隣のアパートを覗き見た。 ここのアパートは3階建ての鉄筋で、12世帯入ってる。私も不動産屋で迷った物件だった。 私のところとは、築年数が10年以上違い、家賃が2万以上も違った。 灯りのついてる部屋は半分ほど。どこがアイツの部屋なのかを知りたいのではなかった。 まさかお隣さんだったとは…。思いがけない事実を飲み下すのに必死だった。 その後、部屋に落ち着くと、テーブルの上に置いたままの紙袋に目を遣る。 『これ、どうしよう。やっぱり捨ててしまおうかな』 下手な小細工をしようとしたばかりに、本来関わらなくて済んだ人間と関わる結果を招いたという事はハッキリしていた。 アイツ、喫茶店で私を見かけたからといって、すぐ声を掛けたりはしなかった。私が出ていくのを一旦は黙って見送ったんだ…。 はぁっとため息。『私ってほんと、なにやってるんだか…』自分発信の厄災に違いない。自己嫌悪。 お風呂に入ろうとバスルームに向かいながら、無造作に紙袋をつまみ上げると、台所のゴミ箱にポスンと落とした。今のこの自己嫌悪を捨て去るが如く、呆気なく。 この土日は特に外出の予定を入れなかった。もしかしたら四方堂君から連絡があるかも、との淡い期待が高まる度に打ち消した。 掃除をして洗濯をして、お昼をどうしようかと考えていたら、あや美からラインが入った。珍しい。 『暇なんです。ランチどうですか?近くまで出ます』と。 休みの日にあや美が連絡をしてくるなど、本当に珍しいことだった。
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