2.終わりと始まり

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お得なランチメニューを頼んで、いつものランチタイムのような他愛もない会話をしながら食べた。 相変わらずのあや美の食べ方も、この性格とセットだからこそ許せるのかなと思い始めていた。 あや美はものすごく食べるのが早い。ゴクンと飲み下して早口に喋る。そして、また食べ物を頬張って、私の話にウンウンと頷く。その繰り返し。 コーヒーとスイーツを追加した頃、気持ちを整えるかのように二三度深呼吸をして、あや美が話を切り出してきた。 「芽衣子さん、例の件ですけど、今どう思ってます?」 テーブルに肘をつき、そのまま腕を組んでマジな感じの口調。 「うん、まぁ、私なりに考えては見たけど…」 歯切れ悪く答えると、あや美の目が光ったような気がした。 「あの…私、なんとなくなんですけど、怪しい…って言うか、この人ならあんなことしでかしそうな気がしてきたというか…」 同じく、あや美も歯切れ悪く言った。が、その言葉とは裏腹に、確信を持ったような表情が気にかかる。 「え?誰なの?」 その時、コーヒーとアイスクリームを添えた小さなケーキが来た。暫し口を噤む。 2人、コーヒーをひと口啜って沈黙を保ったが、あや美がいつもより低い声になり、上目遣いで言い放った。 「みちる」 私は、えっ?という唇と驚いた目であや美を見つめ返した。意外にも、あや美は私の考えていた人物に辿りついたらしかった。 「どうして…そう思うの?」 私もそう思っていたとは言えなかった。だけど、かなり動揺してしまい、図らずも意外な人物の名を聞いたという印象をあや美に与えたようだった。
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