2.終わりと始まり

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みちるが元々私に対して悪感情を抱いていたなら、少し怪しい程度で確信を持ったとしても不思議ではない。 人は感情の生き物だ。私を標的にするための口実なんて、探せばいくらでも出てくるに違いなかった。 私は暗く落ち込むのを止められなかった。それは、みちるにとっては正当な怒りなのだが、私は、あや美にすら隠し通すつもりの事実なのだ。 「芽衣子さん。月曜日に私からみちるに話してみます」 「でも、いきなりお金を盗ったかなんて…」 「大丈夫。上手く言いますから」 「そう…なら、あや美に任せるよ」 こんな事になるなんて…。私の焦燥はあや美の目にも映っていたらしく、あや美は、大丈夫ですよと請け負った。 なにしろ、みちるは的を射てるのだもの。なにか、証拠立てた話にでもなったら…。 『あや美は私を庇い切れるのだろうか…もとい、私を信じきれるだろうか…』 3時を過ぎて、そろそろ店を出ようということになった。長居したところで、これ以上の話はない。 ただ、せっかくここまで出てきてくれた事だし、私のことであや美に要らぬ心配や迷惑を掛けたわけだから、という事で、あや美を私の部屋に誘った。 『本当ですかぁ…うれしいぃぃ!』と、あや美は瞳をキラキラと輝かせて喜んでくれた。 土曜日だし、良かったら晩ご飯まで居てもいいよと言って、駅前のスーパーで一緒に買い物をしてアパートに向かった。 バスに乗っている時、あや美はキョロキョロと周りを伺い、なんだか落ち着きがなかった。
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