2.終わりと始まり

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ビール(トール缶)2本、ワイン1本、缶チューハイ2本を2人で空け、あや美はベロベロだった。 社内の飲み会ではこんな飲み方はしないから、本当に、楽しくて飲みすぎたんだろう。 「あとは寝るだけだからいいよ。ほら、横になったら?」 私は厚手の毛布とタオルケットを重ねて、ゴロンと横になったあや美に掛けてあげた。 「芽衣子さぁん!まだ飲みますよぉ」 吠えてはいるが、もう目が今にも閉じそうだった。 おかしなもので、世話を焼くうち、あや美がかわいく思えてきてしまった。まぁ、妹分だもんね、会社では。 すると、半目のあや美が、ゴニョゴニョとなにかを私に訴えていた。 『?』 「芽衣子さん。私の気のせいかとも思ったんですが、どうやら気のせいではなさそうだと後で感じました」 呂律が回らぬ口で、脈絡の分からない話を始めたあや美。 「なぁに?なんの話よ」 私は酔いも手伝って、愉快でならなかった。あや美の泥酔がおかしくて、笑っていた。 するとあや美。急に、早口で捲し立ててきた。 「さっきのバスの中で、変な男が芽衣子さんを見ていたんですよぅ。なんか薄笑いを浮かべて。気持ち悪かったです、ソイツ…」 なんとなく、誰のことなのかが分かってしまった。アイツがいたのだろう。あの時、あや美が落ち着かないように見えたのは、ヤツの存在に気がついていたからなのね。
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