2.終わりと始まり

23/32
前へ
/310ページ
次へ
それにしても、アイツと縁があり過ぎる。出会う前にもよく見かけてたようなこと、そういえば、アイツが言っていたような…。 「ソイツ、芽衣子さんのアパートの隣に入っていったんですよ。知ってました?ソイツのこと。まさか…!」 あや美は目をパチッと開けて、『ストーカー』という単語を口の形だけで言った。白目が真っ赤だ。 まぁ、そういうことを連想されてもおかしくはない。私自身もそう思ったこともあったのだし。 「あの人なら大丈夫よ。変な人だけど、ストーカーではないと思う」 翌日曜日は、昼近くまで寝床でゴロゴロと過ごした。あや美は『こういうことって一人暮らしならではですよねぇ』となにやらうっとりしていた。 昼をだいぶ過ぎてから、あや美を送りがてら駅前に出た。2人でお蕎麦屋さんでランチをとり、改札口で別れた。 『楽しかった。またね』と私は心から言った。 不思議なことに、あや美とのつき合いは2年近くにもなるのに、こんなふうに関係が深まったのは初めてのことだった。 月曜日は瞬く間にやって来た。朝、目が覚めた瞬間に、みちると本部長の顔が浮かんで、全く気持ちは沈むばかりだ。 オフィスに着くやいなや、待っていたかのように四方堂君が指で合図をしてきた。 私はハァとため息を吐いて、四方堂君が歩き去った先、本部長のオフィスへと足を向けた。 みちるもあや美もまだ来ていなかったし、私としては、みちるがどんな顔をしているのかをまずは確かめたかったのだけど。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加