2.終わりと始まり

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本部長とのアポは始業前の今のタイミングだけだと、本部長室の手前で待っていた四方堂君が囁いた。私は頷いた。 「失礼します」と、四方堂君はノックの後の返事も聞かず入っていく。 私は入口で「おはようございます」と一礼してから入った。 「おはよう。朝っぱらからどうした?四方堂君、芽衣子君も」 事情のあらましもなく、アポだけ取ったのか、四方堂君。なんか面倒くさいな。 「本部長、お手間は取らせません。金曜日の忘年会の後に、少し手違いが起きまして、本部長のお耳に入れておきたいと。朝早くから申し訳ありません」 「忘年会の後?どうした、なにがあった?」 「実は…」 四方堂君は、集められた会費が2万円だけ抜かれて元通りに細工がされていたこと、会費が集められてどのように保管されていたか、自分たちへの嫌がらせではないかと幹事と私が考えている事を手短に説明した。 話の途中から、本部長の目つきが険しくなったことには、多分、四方堂君も気がついただろうと思う。この話し方だと、同僚の中に嫌がらせをした者がいるとの結論付けに、些かストレート過ぎた感じだ。 四方堂君が言葉を切ると、一拍置いて本部長が咳払いをした。 「店の従業員の線には無理があるか?」 本部長も、部下にそのような不届きものがいることを認めたくはないと思う。 「それはないと思います。僕の知る限り、店のスタッフはテーブルの輪の中には入らなかった。松浦さんのバッグに手を伸ばせば、誰かに見られる可能性が高い。それに、社内封筒を手に入れることもほぼ不可能です」 確かに。本部長は唸った。顔が怖い。
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