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すると、本部長は私に視線を移した。
「松浦君…」
「はい…今回の件は、私の手落ちです。嫌がらせを考える人がいたとしても、私がもう少し気を回していたら実行することはなかったんです。本当に申し訳ありません」
私は頭を下げられるだけ下げた。隣で、四方堂君も頭を下げていた。
「まぁ、起きてしまったことは仕方が無いが…実に不愉快だな」
本部長は腕組みをした。思考のサイン。こういう時、私たちはじっと待つことにしていた。
ほんの1分程あと、本部長は徐ろに腕組みを解くと、ゆっくりと私に言った。
「松浦君。この件は君に任せるよ。できたら誰の仕業なのかを突き止めてくれ」
「えっ?」
四方堂君にも意外な言葉だったらしい。2人で顔を見合わせた。
「突き止める…んですか?調べろというのですか?」
ほら、面倒くさいことになった。しかも、私?
「こんな腹立たしい事はない。みんなで楽しく飲んでる席で、そんな嫌がらせを企て実行したやつがいたのなら、俺はとことん追及したい」
やってくれるな?と聞かれた。やれと言うのだから、嫌だなどと言えるわけがない。
「…わかりました」
不承不承ながら、私は首を縦に振ったが、調べるって、一体どうやって?
みちるがそうかもとの見解は伝えなかったが、決定的に分かったとしたら、その理由が私にあったことを私が本部長に伝えなければならなくなる。嫌な役割だと思った。
本部長は、あや美にも手伝わせて、できるだけ秘密裏に事を運ぶようにと付け足した。時代劇の隠密同心かい。
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