2.終わりと始まり

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始業時刻になんとか間に合い、四方堂君と席に戻ると、あや美がコソッと私に耳打ちしてきた。 「本部長なんて?」 私は、『あとで』と口だけで伝えて、仕事を始めた。朝のルーティンワークがひと段落したら、あや美に伝えようと付箋に『1時間後、ラウンジで』と書いて、あや美の手元にペタリと貼った。 7階に、小規模ながらラウンジなる休憩所があって、ほぼ7階住人(営業部など)が占有していた。ただ、午前中のこの時間帯ならほとんど無人なのだ。 『本部長のお墨付きなんだから業務の一環だもんね』 私は衝動に抗えず、手の動きを止めずに視線だけをみちるに向けた。 みちるは男性社員から仕事の指示を受けていた。 ふと、視線を横にずらすと、四方堂君が私を見て、みちるの方に視線を投げた。 私は首を微かに横に振り、眉を上げて見せてから、手元に視線を戻した。 午後から打ち合わせが入っていたから、そんなに時間は取れない。 私は手が空いた頃合いに、あや美に目配せして席を立った。四方堂君は今日も外出していた。 『あの人、そういえばなにをしてるのだろう』 業務報告の内容にそぐわない外出が、ここ最近目立ってきている。 ラウンジは、思った通り無人だった。10時近かったから、ラウンジの横にある喫煙スペースには、誰か来るかもしれなかったが、もし誰か来たとしても気になるほどではない。 あや美が早足でやって来た。 「芽衣子さぁん。お待たせしてすみませぇん」 先に到着した私は、あや美の分のコーヒーも用意していた。椅子はないのでカウンターに寄りかかっていた。 「大丈夫よ。それより、ね、朝、みちるの様子はどんなだった?それを知りたかったんだけど、四方堂君に引っ張っていかれて」 「はい、私もみちるの表情、気にしてたんですけど、さっぱりわからなかったんです。いつも通りでした」 演技派なのかな?それとも、そもそも見当違い?
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