2.終わりと始まり

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席に戻るとあや美はどこかにお使いに出された。 いつの間にか四方堂君は戻っていて、室長となにやら打ち合わせをしていた。 私は午後の打ち合わせに向けて頭を捻っていた。 何気なく、デスクに置きっぱなしの携帯に目をやると、着信ランプが点滅していた。 『?』 四方堂君からのLINEだ。 『今夜話さないか?』 話、ね。 『いいよ。新宿で落ち合おう。三丁目のLRで』と返信した。 金曜日の仕切り直しだ。なんとなく気が重い。四方堂君はどんな言い訳をするのだろうか。まさか、関係を続けようとは言わないはずだけど、もし言われたら…もちろん断る。花の20代を捧げた上に、不倫なんてして女を下げたくはない。 裏腹に、続けたいと言って欲しい気もしていた。 いやいや。『ありえない』先に進まなければ…。 別にラウンジで時間を潰したせいではなく、急に忙しくなってきた。室長からの指示で、急遽午後の打ち合わせの後に出張が入ったのだ。ランチタイムはのんびりとる時間がなく、あや美にパンとお茶を頼んだ。 出張といっても都内なので、直帰していていいとのことだが、私の感じだと帰社した方が良さそうだった。 あや美と派遣の2人には、それぞれ頃合いを見て帰るように言い置いてから、3時半頃に会社を出た。 『先方に着いて、打ち合わせして…6時半頃には戻れるかなぁ』四方堂君に言っておいた方がいいかなぁと思っていたら、当の本人からラインが入った。 『終わったら連絡して』だって。急な出張なのに、耳に入ったか。
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