2.終わりと始まり

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「なぁに?」 私は、少しばかり雰囲気を変えようと笑顔を向けた。 「なぁ、芽衣子。俺のこと、恨んでないか?」 あぁ、そのこと。 私はビールを飲み干して、ナッツをカリカリと噛んだ。空のビールグラスを高く掲げて、お代わりを目で合図した。 「芽衣子?」 「なんで?そんなわけないでしょ」 四方堂君は、きっと私の気持ちを知っていた。今に至ってそう確信した。 私の気持ちを無視して、体の繋がりだけ持っていたんだ。だから、恨まれているなんて思うのだ。 「芽衣子、俺さ…お前とのこと、真剣に考えたことがなかったんだ。だけど、考えるべきだった…長いこと、悪かった」 『これで終わり』ということね。了解。 「正直…」 私はなにを言い出そうというのか、自分でも分からないまま口を開いたが、そこに注文していたピザが来たので口を噤む。 店員が去ってから、私は気を取り直した。 「…正直、今は四方堂君の異動の方がショックかも」 それは本当。だから、頭が働かないのだ。 「そっか。そうだよな。長かったからな」 四方堂君も、なにか吹っ切れたようで、ビールを飲み干してお代わりを頼んだ。 私たちはピザを食べて、食べ出したら食欲が刺激され、無心になって食べ続けた。
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