3.不信

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翌朝、出社して一番に、昨夜送ったメールの返信を確認すると、担当者から『朝、お届けに上がります』とあった。 ラッキーと思いきや、この感じだと、この次飲みに誘われたら断れないパターンだと気がついた。 ガクッと頭を垂れていたら、あや美が出社してきた。 「おはようございまぁす。あれ?芽衣子さん、どしたんですかぁ?」 オーバーリアクションで、なんか心配させてしまった。 「ちょっとね、あはは」 わざとらしい乾いた笑い声をたてて、その場は誤魔化した。 その後、通常通りに朝礼に加わり、昨日室長とすり合わせた内容を報告した。 予想通りの本部長から質問があったが、手元に打ち合わせた内容の資料がなく、『詳細は後ほどお持ちします』と、言い逃れた。 ミーティングルームから戻ると、人事に行く時間だった。 明日から年末年始の休業で、今日までの派遣たちの勤怠を提出するのだ。この辺りのアナログなやり方は早急になんとかすべきだと思わなくもない。 朝、室長の机に急ぎですと言い添えて置いてきたから、もう承認印は押されただろう。 「室長。人事に行きます」 私は勤怠ファイルをせっついた。室長は、あそうか、と言い、今押印していた。 人事は7階にある。同期が1人いて、行けばなにかとおしゃべりの相手にさせられる。 「よろしくぅ」 声を掛け、ファイルを差し出すと、待っていましたとばかりに、同期の美波がしゃべり出した。 今日は忙しいと言いながら、なかなか私を開放してくれない。 私を『松浦さん』と呼ぶからか、なんとなく距離を感じる子なんだよね。 苦笑しながら10分ほどつき合い、他部署の人が来たタイミングで『じゃ、またね』と、出てきた。ハァもぅ、めっちゃ疲れる。
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